ビオワインの美味しさと面白さと難しさ
- writer :pino-pino
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定義なし?言ったもん勝ち?のビオワイン
ワインが好きな方なら「ビオワイン」という言葉を聞いたことがありますよね?「ビオ」というのは、フランス語で「オーガニック(有機)」を意味する「biologique(読み方・ビオロジック)」とフランス語で「ダイナミックス(生体力学)」を意味する「biodynamique(ビオディナミ)」の二つの言葉が合わさってできた言葉です。
…と、最初から英語の授業のような話から始まってしまうビオのお話ですが、さらに話を混乱させるのは、ブドウ栽培が有機農法でも、醸造過程で亜硫酸などの化学物質を加えることが許されているので、どこまでがオーガニックと呼べるのかに議論の余地があることです。
この議論を避けるかのように、「ヴァン・ナチュール(自然派ワイン)」というカテゴリーも最近耳にするようになりました。こちらの方はさらに定義が曖昧ですが、ブドウが有機栽培であるのは当然のこと、醸造においても添加物不使用、無ろ過など、昔ながらの製法に近い方法で造るワインをそう呼ぶようです。ちなみに「ビオディナミ」は日本ではなじみのない単語ですが、天文学や潮の満ち引きなどまで農業に取り入れる手法で、宗教的な要素が入っているといわれています。
ビオワインを選ぶときに注意すること
ビオワインに興味を持つ人には2つの入口があって、1つは健康上の動機の持ち主です。これは主婦や高齢者の方に多いのですが、「ワインに入っている亜硫酸は体に悪い」という説を信じて、亜硫酸無添加ワインを好む人たちです。
亜硫酸は、発酵中の腐敗防止とワインの酸化防止のために加えます。ワインはフルーツや魚と同じ生ものなので、亜硫酸を入れなければ、ワインは容易に劣化してしまいます。ワインに入っている微量の亜硫酸が健康に害を及ぼすはありませんが、添加物であることには違いないので、少ないに越したことはありません。
しかし注意してほしいのは、日本の大企業が造る「亜硫酸無添加」ワイン。ラベルに大々的に「亜硫酸無添加」を掲げるワインの多くは、腐敗の原因となる微生物を“超強力ろ過装置”で濾しています。強力ろ過で微生物をゼロにすることで、亜硫酸を添加しなくてもOKになるというロジックです。
ただし、微生物はいなくなりますが、ワインの旨味も一緒にろ過され消えてしまいます。私はこのタイプのワインをブラインドで飲んだ時、濃縮還元のブドウジュースと間違えました。それほどに本来のワインの味わいとはかけ離れてしまっているので、味と健康、どちらを重視するかの選択になります。
2つ目の入口は、ワインにハマった人たちの「もっとユニークなワイン、美味しいワインはないか?」というシンプルな動機によります。この方たちがビオワインを選ぶ際の注意点は、物流管理の方法を見極めること。ビオワインはワインの状態を安定させる添加物が少ないので、物流上の管理が甘いと、馬小屋のような湿った雑巾のような不快な臭いが発生して、飲める代物ではなくなってしまいます。
チェックポイントとしては、ワインの裏ラベルに「リーファー(冷蔵機能付コンテナ輸送)」と明記してあるワインを選び、ビオワインは冷蔵庫に入れて保存するショップを選ぶことです。
結局ビオって美味しいの?に対する超個人的な経験談
かつて、私は多くのWineLoverと同じように「ビオ」とか「オーガニック」ワインに懐疑的でした。なぜなら「おいしくなかった」からです。値段は普通のワインより高いのに!亜硫酸が工業的な添加物だとはいえ、添加物入りの食品はワインに限らないのだから、多少体に害がある物質が入っていても、美味しいワインを飲みたい!と思っていました。
しかし出産を機にこの考え方に少し変化が生まれました。きっかけは、千円くらいの海外の安ワインが飲めなくなってしまったこと。なぜかおいしく感じない。飲んだ後、舌に重たさが残る。お酒がダメな体質になってしまったのかといえばそうではなく、丁寧に造られた自然派ワインは、スイスイ飲めるのです。
私は専門家ではないのでただの「勘」なのですが、これは亜硫酸添加量の違いからくるのではないかな?と思うに至りました。私はさほど農薬や添加物を意識するタイプではありませんでしたが、妊娠・出産期に体が欲するものを食べていたら、自然と化学調味料や添加物が多い食物を食べなくなりました。その結果、意図せず体内のデトックスが行われ、以前は気にならなかった亜硫酸にも反応するようになったのではないかな、…と。あくまで想像ですが。
まあ、難しいことはさておき、「結局ビオって美味しいの?」という大事な点について。pino-pinoは「丁寧に造り管理されている」という条件付きで「とても美味しい」と答えます。自然の恵みをそのままいただいているような、滋味ともいえる味がします。自然派ワインはろ過しないので色は濁っているし、濃いワインを飲みなれた人には「これがワイン?」と首をかしげるような穏やかな味がしますが、料理に例えるなら、そう、鰹や昆布から取った天然のダシ!おばあちゃんになっても飲みたい優しく温かな味わいがあります。