恋にも癒しにも効く?貴腐ワインの力
- writer :pino-pino
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高貴なる腐敗が生み出す癒し系甘口ワイン。
ワインは気分に合わせて選びたくなります。お祝いには「ポン」「シュワシュワ」と軽快な音で気分を盛り上げるスパークリングワインを、反対に一人静かに過ごしたい夜はしっとりしたコクと甘さの貴腐ワインに手がのびます。
「貴腐」というのはワイン業界の用語で、フランス語の「la pourriture noble」=「高貴なる腐敗」を直訳した言葉です。腐敗というと語弊がありますが、ある特別な気候条件において白ブドウに「ボトリティス・ シネレア菌」というガビが繁殖すると、水分が蒸発し糖分が濃縮され、一見腐ったような干しブドウ状態になります。そのブドウを発酵させて造られるのが貴腐ワインです。ブドウ栽培・選別・醸造の全ての過程において手間がかかる貴重なワインといえます。
ギリシャ神話に不老不死の飲み物として登場する「ネクタル(ネクター)」にも例えられる貴腐ワイン。ミクロクリマ(微気象=特定の狭い地区に特徴的な気候)の偶然に人知が加わり生み出され天然の甘みには、人の心を癒す優しい力があります。
失恋、失敗、失望。人生で立ち止まりたくなったときに、貴腐ワインをお気に入りのグラスに注ぎ一口含んでみてください。天然の甘みとトロリとしたコクが、氷のように固くなった心を少しずつ溶かしてくれるはずです。
世界三大貴腐ワインだけじゃない。マイナー産地にも注目!
世界の三大貴腐ワインの一つは「シャトー・ディケム」に代表されるフランスのソーテルヌ地方の貴腐ワイン。そしてドイツの最高級格付けトロッケン・ベーレン・アウスレーゼ(乾いた・レーズン状になったブドウ粒・選り分ける=乾燥して完熟した良い房を選んで造ったワイン)、もう一つが東欧ハンガリー北東部のトカイ地方で生産されるトカイです。
三大産地の貴腐ワインは有名なだけに、価格もハーフボトル(375ml)で1万円以上しますが、産地を限定せずに、また貴腐ワイン以外のデザートワインも含めれば選択肢はかなり広がります。
フランスならロワール地方にも貴腐ワインを造るAOCがあります。また酒精強化ワイン(アルコール添加)ですが南フランスの伝統的なバニュルスは濃厚な赤の甘口ワインです。 氷結したブドウから造られるカナダのアイスワインも日本人にはなじみがありますね。チリ産の「レイトハーベスト(遅摘み)」もいいですし、日本でも甲州やナイヤガラなどの固有品種から高品質のデザートトワインが出てきています。
pino-pinoのおススメは完全な貴腐ではなく酸味を残したタイプです。ドイツの格付けでいうとカビネットやシュペトレーゼくらい。これを甘いケーキと一緒に飲むのが至福のひと時。甘い物+甘い物に後ろめたさも感じますが、たまには…の密かな主婦の楽しみです。
プロポーズには指輪に貴腐ワインを添えて。
もし彼女がワインもスイーツも好きな女性なら、貴腐ワインは両方の魅力をそなえた最強のアイテム。誕生日のプレゼントにはもちろん「プロポーズにも使えます!」とpino-pinoは強くおススメできます。
貴腐ワインの良いところは糖分が多く長期間保存できることなので、結婚10周年、20周年、もしかしたら金婚式まで熟成できるかもしれません。「○年後に一緒に飲もう」と指輪とともに貴腐ワインを渡されたら嬉しいだろうなあ…。
私の場合、プロポーズに貴腐ワインは付いていなかったのですが、ある年のバレンタインデーに、ダンナさんが勤めていたワイナリーの04年産のデザートワインをもらいました。もったいなくてまだ開けていませんが、先日ワインを整理していたときにボトルを確認したら、ワインの色が黄色から黄金色になっていたのです。
飲み頃を迎えているようです。結婚10周年の節目に飲むことを決めて、忘れないようラベルに「2020年の結婚記念日に飲もうね」とメモしておきました。